GALLERY TOMO

2023.11.10

篠原 猛史 -生の臨界点-


篠原 猛史 -生の臨界点-
2023年11月10日(金)→11月25日(土)
12:00→18:00
日曜月曜休廊

TAKESHI SHINOHARA -THE CRITICAL POINT OF LIFE-
Fri. November 10 – Sat. November 25  Noon–6pm(Closed on Sundays and Mondays)

 篠原猛史は京都市に生まれ、1981年にNYのプラット・インスティテュートのドローイング専攻を卒業。その後はベルギーを中心に、カナダ、ガーナ、フランス、北欧など様々な国々を拠点としながらその芸術を磨き上げてきました。初めに渡ったNYではヨーゼフ・ボイスの薫陶を受けその社会彫刻の概念を参照し、また親交のあったキース・へリングとは互いの作品を交換するなど知己を得て、80年代よりその名を知られ始めました。00年代に入ってからは国内に拠点を移し活動しています。

 篠原の作品は立体と平面、抽象と具象の区別は特にありません。そして風、水、火や音などあらゆるものを素材と見立てて作品を構成させます。これらは単なる造形の構成でもなければ、抽象的なコンセプトの主張でもなく、自然の絶えざる循環と人間の営為によるその関係性といった、現実的な問題についての表現なのです。

 そして、篠原は自らが晩年に差し掛かったことを認識しました。自然と人工の対峙に生と死。さまざまな要素の間には境界があり、明確に差異(区別)が存在します。自らの命の期限を感じるのは誰でも寂しいものだろうと考えますが、篠原は依然生きており、今しかない時間を作品にしています。アーティスト、ギャラリスト、鑑賞者。それぞれが作品に対して向かい合う時に、全反射が起きる時を待つのが、近年の「臨界」シリーズと云えます。

 そういった中、近年の制作は主に「臨界」というキーワードに基づいています。これらの作品群にはとにかく青がほとばしっています。そういった中、鑑賞者は青を認識します。一見するとただの青かもしれません。しかしこれは永続する時間の表象として存在します。作家の根幹をランガーシュ(視覚化)した言語としての色です。
 3年前の「可視の臨界点、2020」では改めて社会とアートの関係性を再確認し、京都は鴨川でのインスタレーションも行いました。一昨年からの2つの展示「月行観天望気論、2021」、「月の臨界角、2022」では、作品がより作家内側からの発露に基づいた形で表現されており、篠原の人生を分類したかのようなP12号のショートストーリーの連作は人生のページをめくる走馬灯のように鑑賞者の視界を経て脳内へと逡巡します。絵も音楽も認識する人がいて絵や音楽として存在しますが、これらの作品はその篠原自身を分類し、鑑賞者と一体となって作品を構成します。それは命の在り方から芸術作品の在り方、定義なども見直すきっかけをくれるものです。

 近年の主な個展は、「月の臨界角」松坂屋上野店外商サロン(東京、2023年)、「可視の臨界点」GALLERY TOMO(京都、2020年)など。近年出展したアートフェアとしてACK (国立京都国際会館、2021、2022)、art KYOTO 2023 (元離宮二条城、2023)、アートフェア東京2023 (東京国際フォーラム、2023)など。彼の作品は、大英博物館(ロンドン)を筆頭に、アントワープ王立美術館(アントワープ)、ブダペスト美術館(ブダペスト)、ゲント現代美術館(ゲント)、愛知県立美術館(名古屋)、国立国際美術館(大阪)など、数多くの著名な公共及び民間のコレクションに収蔵されています。

GALLERY TOMO

Takeshi Shinohara was born in Kyoto, Japan, and graduated from the Pratt Institute in New York in 1981 with a degree in drawing. Since then, he has refined his art while based in Belgium, Canada, Ghana, France, Scandinavia, and various other countries. In the 2000s, Shinohara relocated to Japan, where he has been active since the beginning of the decade.

Shinohara’s work does not distinguish between three-dimensional and two-dimensional, abstract and figurative. He composes his works by using wind, water, fire, sound, and all other things as materials. These are not mere figurative compositions or abstract conceptual assertions, but rather expressions of realistic issues such as the constant cycles of nature and their relationship to human activity.

Shinohara recognized that he was approaching the end of his life. The confrontation of nature and artifice, life and death. There are boundaries and clear differences (distinctions) between the various elements. Although it would be sad for anyone to feel their life is about to expire, Shinohara is still alive, and he is creating works of art in the time that is only now available. Artist, gallerist, and viewer. The “Critical” series of recent years can be said to be about waiting for the moment when all reflections occur when each of us faces the work.

In this context, recent works are mainly based on the keyword “critical. These works are filled with blue(Shinohara blue). In such a situation, the viewer recognizes blue. At first glance, it may appear to be just blue. However, it exists as a representation of time that endures. Three years ago, in “The Critical Point of Visibility, 2020,” the artist reaffirmed the relationship between society and art, and also held an installation on the Kamo River in Kyoto. In the two exhibitions from the year before last, “Moon of weather lone, 2021” and “Critical Angle of the Moon, 2022,” the works are expressed in a form based more on the artist’s inner emanation. The paintings and the music are both recognizable to the viewer. While both paintings and music exist as paintings and music because there are people who recognize them, these works categorize Shinohara himself, becoming one with the viewer and composing the work. It is an opportunity to rethink the way life is, the way works of art are, and their definitions.

Recent major solo exhibitions include “Critical Angle of the Moon” at Matsuzakaya Ueno Store, Tokyo (2023) and “Critical Point of Visibility” at Gallery Tomo, Kyoto (2020). Recent art fairs he has exhibited at include ACK (Kyoto International Conference Center, 2021, 2022), art KYOTO 2023 (Nijo Castle, 2023), and Art Fair Tokyo 2023 (Tokyo International Forum, 2023). His work is held in a number of prominent public and private collections, including the British Museum (London), Royal Museum of Fine Arts (Antwerp), Budapest Museum of Fine Arts (Budapest), Ghent Contemporary Art Museum (Ghent), Aichi prefectural museum of art (Nagoya), and The National Museum of Art , Osaka (Osaka).

GALLERY TOMO

March 10 Fri – March 12 Sun, 2023 (preview: March 9)
GALLERY TOMOは、ART FAIR TOKYO 2023 に参加致します。
出展アーティスト:近藤大祐、宮岡貴泉、篠原猛史、こうす系

Booth No: Galleries:L013
venue:東京国際フォーラム /Tokyo International Forum
https://ticket.artfairtokyo.com/

2023.1.25

篠原 猛史展


2023年1月25日(水)より松坂屋上野店にて出展致します。
詳しくは外商へお問合せくださいませ。

出展作家:篠原 猛史
場所:松坂屋上野店 本館7F お得意様サロン
https://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/gaisho/shinki/

2022.10.28

篠原 猛史 月の臨界角

篠原 猛史 月の臨界角

2022年10月28(金)~11月12日(土)
13:00―18:00
金土日のみ営業

風、火、水、音などの自然界に見られるさまざまな要素によって特徴づけられる篠原の作品群は、作者の思いを鑑賞者に対して一方的に提示するものではなく、特別な仕掛けを用いるわけでもなく、鑑賞者が作品と向き合うことで明らかになる。
作品という現象のなかに興味深く入り込み、アーティストと共感(エンパシー)を得ることで、我々は却って「見る」という行為を純粋に楽しみ、感覚を解きほぐしながら環境の中に新しい発見や体験をする機会を得ることができる。作品はきっかけに過ぎない。

2021年 月行観天望気論
https://gallery-tomo.com/archive/5378/

2022年:今を生きることを画面に定着させる旅。

篠原の最近の制作の動機は生の実感を持てるかどうかということだろう。
昨年から、「月」がキーワードとなり、「自由」を反映した作品を展開している篠原。これまでの制作の基本姿勢とともに、これまでのアーティストとして様々な国を渡り歩き暮らしてきた体験や経験の蓄積を振り返るように画面の中に立ち現れるものとなった。

物の可視性。自らの混沌。人や動物が互いの関係性によって影響を及ぼし合い変化する軌道。光と影。関係の倒錯。孤独。循環と淘汰。様々な要素がエピソードのように並んでいく。

極めて個人的な体験というものは他者のいずれの眼にも見えない。篠原にとって体験そのものが作品の本質であり、作品を形作る集合的な構成概念となる。例えば描かれている地上に見えている木は、実際はその根が大切なところであって、その根が形さえ左右する。
人の眼は全てにフォーカスしようとしても全てのものを見ることはできないが、目の前の物事は同時に進行していくものだ。
ソシュール、パロール以前に、人間の根本が大事であり、それが伴ってようやく自由に生きることへつながるのではないかという篠原の思いが垣間見える。

今年になって制作に勇気が要るようになったと述べる篠原。おそらくそれは今ここにある時間の有限さを敏感に感じ取っているからではないかと考える。

GALLERY TOMO

※篠原の作品は続くACKにても展示致します。
https://a-c-k.jp/


GALLERY TOMOは、D-art,ART 2022 大丸心斎橋に参加致します。
出展アーティスト
近藤大祐: https://www.taisuke-kondouh.com/
篠原猛史: https://gallery-tomo.com/artist/5130/
宮岡貴泉: https://bijutsutecho.com/artists/1675
こうす系: https://mclbakaloc.wixsite.com/kooooosuk

venue:大丸心斎橋店 / 心斎橋PARCO 14階 SPACE14
本館 1階 御堂筋側イベントスペース
Dates:6月15日(水曜日) ~ 20日(月曜日)
※14階のみ最終日は16時閉場

https://dmdepart.jp/d-artart/


GALLERY TOMOは、art stage OSAKA 2022に参加致します。
出展アーティスト
篠原猛史: https://gallery-tomo.com/artist/5130/
宮岡貴泉: https://bijutsutecho.com/artists/1675
月乃カエル:https://www.tagboat.com/products/list.php?author_id=1003160

Booth No:06
venue:堂島リバーフォーラム / DOJIMA RIVER FORUM
Dates:ベルニサージュ :6月2日(木曜日)/ パブリックビュー: 6月3日(金曜日)~ 6月5日(日曜日)
https://artstageosaka.com/

GALLERY TOMOは「Art Collaboration Kyoto」に参加致します。
https://a-c-k.jp/

ギャラリーコラボレーション
GALLERY TOMO (京都) ― Marsiglione Arts Gallery (コモ・イタリア)
出展アーティスト:篠原猛史、近藤大祐、石原孟、マックス・パぺスキ(MAG)

内覧会
2021年11月4日(木) *報道関係者と招待客のみ
一般会期
2021年11月5日(金)〜11月7日(日)

会場
国立京都国際会館イベントホール (京都市左京区宝ヶ池) ほか
*京都市営地下鉄 烏丸線 国際会館駅から徒歩5分

2021.9.02

篠原 猛史 『月行観天望気論』Moon of weather lone.

篠原 猛史 『月行観天望気論』Moon of weather lone.

2021年10月22日~31日
13時~19時
最終日17:00迄
月火休

「月行観天望気論」

風、火、水、音などの自然界に見られるさまざまな要素によって特徴づけられる篠原の作品群は、作者の思いを鑑賞者に対して一方的に提示するものではなく、特別な仕掛けを用いるわけでもなく、鑑賞者が作品と向き合うことで明らかになる。
作品という現象のなかに興味深く入り込み、アーティストと共感(エンパシー)を得ることで、我々は却って「見る」という行為を純粋に楽しみ、感覚を解きほぐしながら環境の中に新しい発見や体験をする機会を得ることができる。作品はきっかけに過ぎない。

篠原の今回の制作の動機は「月」。つまり重力から解放されることだという。
月はいずれの時代に於いても、ほぼすべての人にとって最も身近で、最も目にしてきた天体だろう。

フランク・シナトラが” Fly me to the Moon”を歌った時代にこの世に生を受けた篠原。私はその子供世代であるが、篠原も私も共通して不可逆的に流れる時間の流れに身を委ね生きている。芸術概念を拡大し、社会彫刻と呼ばれる活動をしたヨーゼフ・ボイスに師事した篠原は、自らの制作活動が、社会と自然、芸術の相互間で循環しつつ昇華されていくことを大切にしてきた。

今回のテーマは、地上とは異なるであろう物の見え方を可視化する試みとなる。
月は遠く離れているにもかかわらず多くの人の視界に存在するが、もっと近い人々を見ることは難しい。大気に影響されない月面においては光の屈折率や隠蔽率、透過具合、そして重力など地上とは異なるだろう。
うさぎが光と影の間に体が存在している様、蛇口が蛇口ではなくなるだろう役割の変換等、地上とは異なる見え方や形の提示をすることによって、様々な示唆をもたらすものだ。

天体が大きくなればなるほど中心から離れてしまい、離れれば離れるほど重圧も少なくなる重力の特性とは、日常を生きる我々にとって何を意味するのだろうか。重力とは時空の歪みのことだが、何にでも影響を及ぼしている。文字通り時間にも。

詩人ボードレールは時間の制約について退屈で苦しいと述べている。時間が命を食らっていると。篠原も似たようなストレスを味わっていると述べる。
時間とは私たちを強制的に過去から未来へ連れ去る、一方通行の流れだ。米ソが月を目指し、映画2001年宇宙の旅が制作され、東西冷戦の影響は色濃く技術革新が進む時代を経て、1980年代の終わりにベルリンの壁崩壊を直接目にした篠原。そしてイデオロギーの支配からの離脱を象徴するソ連崩壊。歴史は容赦なく未来へ流れゆく。
そうした社会の変容をまさに肌身に感じつつ目撃してきた篠原が、哲学と科学のはざまで、重力の束縛から離れ、自由(理論的にも)であることで生まれた作品群が今回の展示内容となっている。

篠原は東京大学においても授業、ワークショップ形式の講座を開いている。触発と創造の為の芸術ワークショップと題したもので、この講座は学生だけでなく社会人も参加できる。さまざまな立場の人々が参加する中、作品を介して内と外を隔てることなく水平的に作品を通じて人々の思考の幅を刺激する、アートの社会的機能を示すものである。
また、京都ではRESI STAY弘庵別邸という部屋が4つあるホテルの客室に篠原の作品が常設されている。こちらも機会があれば是非ご覧になってほしい。

GALLERY TOMO
青山 知相
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篠原猛史
アーティストホームページ
https://www.takeshishinohara.com/

2020.10.18

篠原 猛史 「可視の臨界点」

篠原 猛史 「可視の臨界点」
2020年11月14日(土)~28日(土)
月・火曜休廊
13:00-19:00 最終日17時迄

※要予約
・お越し頂ける方は、以下のフォームよりご希望の来廊時間をお問合せ下さい。
・マスクの着用と検温にご協力下さい。ご予約の時間に来られない場合キャンセルとさせて頂きます。
https://gallery-tomo.com/contact/

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風、火、水、音などの自然界に見られるさまざまな要素によって特徴づけられる篠原の作品群は、作者の思いを鑑賞者に対して一方的に提示するものではなく、特別な仕掛けを用いるわけでもなく、鑑賞者が作品と向き合うことで明らかになる。作品という現象のなかに興味深く入り込み、アーティストと共感(エンパシー)を得ることで、我々は却って「見る」という行為を純粋に楽しみ、感覚を解きほぐしながら環境の中に新しい発見や体験をする機会を得ることができる。作品はきっかけに過ぎない。

これは昨年の展示でも同じことを申し上げた。そしてこの一年間で世界は苛烈な変化に見舞われ、特に新型コロナウイルスが社会へ与えた影響の大きさは計り知れない。
様々な意見や時に争いが起き、グローバリズムは寸断され、意見交換もままならず選択した施政者に運命を委ねる時代だ。しかし、ウイルスが歴史の行方を決めるわけではなく、決定するのはやはり人間である。

様々な環境の中、様々な人間が住むこの世界で、感染症に対しては正しい科学的なアプローチで臨み、異なった価値観の人間同士が手を取り合って対処しなければならないのがウイルスだ。しかし現実に我々は手を取り合うことは非常に難しい。なぜならこの世界において科学が及ばない領域も大きいからだ。

人によって、必要なもの不必要なものがある。この目の前の危機に連日曝され、いよいよ思考を放棄したり、存在自体に疑いを持ったり、はたまた人間自体が儚いものだという自覚を深めたり、ものや命の価値が揺れ動く。

そんな中、一見取り上げる価値のないと思われるものを一つの文化史として浮上させる、パサージュ論的な、そういった思考の転換がアートの役割のひとつではないかと考える。

ギャラリーが社会から切り離されたアートを鑑賞するためだけの空間ではなく、人間が社会や自然環境と深く関わりながら生きることの可能性を、展示を通して改めて提案したい。

篠原は東京大学においても授業、ワークショップ形式の講座を開いている。触発と創造の為の芸術ワークショップと題したもので、この講座は学生だけでなく社会人も参加できる。さまざまな立場の人々が参加する中、作品を介して内と外を隔てることなく水平的に作品を通じて人々の思考の幅を刺激する、アートの社会的機能を示すものである。
また、京都ではRESI STAY弘庵別邸という部屋が4つあるホテルの客室に篠原の作品が常設されている。こちらも機会があれば是非ご覧になってほしい。

GALLERY TOMO
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篠原猛史
アーティストホームページ
https://www.takeshishinohara.com/

2020.4.03

篠原 猛史

篠原猛史 | SHINOHARA Takeshi
京都生まれ

1969 ノルウェーにて滞在制作
1973 大阪芸術大学芸術学部デザイン学科卒業
1981 プラット・インスティトュート ドローイング専攻卒業(ニューヨーク/アメリカ)
1982 バンクーバー(カナダ)で環境彫刻を学ぶ (公費留学)
1989 アクラ (ガーナ)にて環境造形を学ぶ
1995 フランス・マゼレール・セントラム(ベルギー)で学ぶ (公費留学)
2001 フィンランド、ベルギーでデザインを学ぶ
2004 アーネム(オランダ)にて芸術設計を学ぶ
2005 オーウルゴーウルデン・ラボ(スウェーデン)で芸術設計を学ぶ (公費留学)
2006 ニース・ラボ(ベルギー)にて芸術設計を学ぶ (公費留学)

 篠原猛史は京都市に生まれ、1981年にNYのプラット・インスティテュートのドローイング専攻を卒業。その後はベルギーを中心に、カナダ、ガーナ、フランス、北欧など様々な国々を拠点としながらその芸術を磨き上げてきました。初めに渡ったNYではヨーゼフ・ボイスの薫陶を受けその社会彫刻の概念を参照し、また親交のあったキース・へリングとは互いの作品を交換するなど知己を得て、80年代よりその名を知られ始めました。00年代に入ってから現在は日本国内に拠点を移し、東京大学の講師としても活動しています。
 篠原の作品は立体と平面、抽象と具象の区別は特にありません。そして風、水、火や音などあらゆるものを素材と見立てて作品を構成させます。これらは単なる造形の構成でもなければ、抽象的なコンセプトの主張でもなく、自然の絶えざる循環と人間の営為によるその関係性といった、現実的な問題についての表現なのです。

 そして、篠原は自らが晩年に差し掛かったことを認識しました。自然と人工の対峙に生と死。さまざまな要素の間には境界があり、明確に差異(区別)が存在します。自らの命の期限を感じるのは誰でも寂しいものだろうと考えますが、篠原は依然生きており、今しかない時間を作品にしています。アーティスト、ギャラリスト、鑑賞者。それぞれが作品に対して向かい合う時に、全反射が起きる時を待つのが、近年の「臨界」シリーズと云えます。
 近年の制作はまさにこの「臨界」というキーワードに基づいています。これらの作品群にはとにかく青がほとばしります。そうした中、鑑賞者はその青を認識しますが一見するとただの青かもしれません。しかしこれは永続する時間の表象として存在します。作家の根幹をランガージュした言語としての色です。

 「可視の臨界点、2020」では改めて社会とアートの関係性を再確認し、京都は鴨川でのインスタレーションも行いました。そこからの2つの展示「月行観天望気論、2021」、「月の臨界角、2022」では、作品がより作家内側からの発露に基づいた形で表現されており、篠原の人生を分類したかのようなP12号のショートストーリーの連作は人生のページをめくる走馬灯のように鑑賞者の視界を経て脳内へと逡巡します。絵も音楽も認識する人がいて絵や音楽として存在しますが、これらの作品はその篠原自身を分類し、鑑賞者と一体となって作品を構成します。それは命の在り方から芸術作品の在り方、定義なども見直すきっかけをくれるものです。

 近年の主な個展は、「生の臨界点」GALLERY TOMO(京都、2023)、「月の臨界角」松坂屋上野店外商サロン(東京、2023)など。近年出展したアートフェアとしてACK (国立京都国際会館、2021、2022)、art KYOTO 2023 (元離宮二条城、2023)、アートフェア東京2023 (東京国際フォーラム、2023)など。彼の作品は、大英博物館(イギリス)を筆頭に、ヘント市立現代美術館(ベルギー)、愛知県美術館(名古屋)、国立国際美術館(大阪)など、数多くの著名な公共及び民間のコレクションに収蔵されています。

GALLERY TOMO

Takeshi Shinohara was born in Kyoto, Japan, and graduated from the Pratt Institute in New York in 1981 with a degree in drawing. Since then, he has refined his art while based in Belgium, Canada, Ghana, France, Scandinavia, and various other countries. In the 00’s, he has now relocated to Japan, where he also works as a lecturer at The University of Tokyo.

Shinohara’s work does not distinguish between three-dimensional and two-dimensional, abstract and figurative. He composes his works by using wind, water, fire, sound, and all other things as materials. These are not mere figurative compositions or abstract conceptual assertions, but rather expressions of realistic issues such as the constant cycles of nature and their relationship to human activity.

Shinohara recognized that he was approaching the end of his life. The confrontation of nature and artifice, life and death. There are boundaries and clear differences (distinctions) between the various elements. Although it would be sad for anyone to feel their life is about to expire, Shinohara is still alive, and he is creating works of art in the time that is only now available. Artist, gallerist, and viewer. The “Critical” series of recent years can be said to be about waiting for the moment when all reflections occur when each of us faces the work.

Recent productions are based on this very keyword, “Critical”. These works are filled with blue (Shinohara blue). The viewer recognizes blue, but at first glance, it may appear to be just blue. However, it exists as a representation of time that endures.

Four years ago, in “The Critical Point of Visibility, 2020,” the artist reaffirmed the relationship between society and art, and also held an installation on the Kamo River in Kyoto. In the two exhibitions after this exhibition, “Moon of weather lone, 2021” and “Critical Angle of the Moon, 2022,” the works are expressed in a form based more on the artist’s inner emanation. The paintings and the music are both recognizable to the viewer. While both paintings and music exist as paintings and music because there are people who recognize them, these works categorize Shinohara himself, becoming one with the viewer and composing the work. It is an opportunity to rethink the way life is, the way works of art are, and their definitions.

Recent major solo exhibitions include “The Critical Point of Life” at GALLERY TOMO, Kyoto (2023) and “Critical Angle of the Moon” at Matsuzakaya Ueno Store, Tokyo (2023).
Recent art fairs he has exhibited at include ACK (Kyoto International Conference Center, 2021, 2022), art KYOTO 2023 (Nijo Castle, 2023), and Art Fair Tokyo 2023 (Tokyo International Forum, 2023).

His work is held in a number of prominent public and private collections, including the British Museum (U.K.), S.M.A.K., the Municipal Museum of Contemporary Art – Ghent(Belgium), Aichi prefectural museum of art (Aichi), and The National Museum of Art, Osaka (Osaka).

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