鳥彦 -VICES-
2021年12月3日(金)~19日(日)
13:00-18:00
金・土・日のみOPEN
会期中、オンライン特設ページにて出展作品を併売致します。
※販売期間は終了しました。
https://gallery-tomo.shop/
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VICES
VICEとは日本語で悪徳であり、この言葉には価値判断が多分に含まれている。美徳も悪徳も本来存在しない。人間にとって実現が難しく好ましい性質を美徳と呼び、人間にとって常態化していて好ましくない性質を悪徳と呼ぶ。
つまり普通に暮らしていれば美徳は出現せず、人間は悪徳に染まりきるものなのだ。自然な状態を否定して、不断の努力によって異常な状態を維持しなければ、人間はただの獣である。そしてそんなことができる獣は少ない。貴重であるから美徳は良しとされ、”人間”は良しとされるのだ。これは何も暗い気持ちになる話ではない。悪徳とは要するに人間の常態を表しているだけだ。怠惰で傲慢で我慢がきかない、極め付けは他人を攻撃していい気になるのが人間であり、それの何が悪いのか?
もちろん、悪いに決まっている。
鳥彦
Artist homepage
https://torihiko.thebase.in/
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鳥彦の個展に際して
弊ギャラリーに於ける10回目の個展、今回のテーマは「VICES」。
この10年間、世の中でも様々なことが起きた。震災、文明観の軋轢、感染症…
人間の世界とそう遠くないところで、鳥人たちの世界は存在する。
テーマから感じられるのは、この10年の人間の業や穢れを、鳥人たちが背負い彷徨っているかのよう。
鳥彦の用いるメゾチント技法という根気を伴うストイックな銅版画は、その作業の大変さと裏腹な静謐な黒の世界観が魅力だが、作家が添える皮肉や救いのない物語のユニット表現が年を重ねる毎に洗練を見せている。
鳥人のシンプルなパーツのなかに感情の視える表情、遠景をぼんやりさせる素材の生かし方、西洋との気候の違いによるインクの湿度感など見所は多い。
発祥した地域でほとんど使われなくなった技法を、日本人がガラパゴス的に進化させてきた独自性と合わせて、近年表現の幅を拡げているドローイングや鳥土偶という陶土で表現したアイテムなどこちらも注目したい。
この世界の傍にある冷めた「黒」の世界観を、この機会にぜひご高覧ください。
GALLERY TOMO
青山 知相